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散歩

ペンネーム:おばちゃんさん


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あれは、そう、もう十年くらい前に起きた出来事でした。あの日、私は子供を連れて散歩に出かけました。家を出て、少し行くと道が二手に分かれます。

その内の左の道を行くことにし、私は曲がろうとします――その時、前方から白いワンピースを着た幼い女の子が、お爺さんらしき人と手をつなぎながらやって来ました。不思議なことに、女の子の周りは、白い靄の様な物が全身にまとわり付いていて、顔が良く見えません。さらに奇妙なことに、その女の子は片手を上げて、お爺さんらしき人と手をつないでいるらしいのですが、肝心のお爺さんらしき人の手が無いのです。いえ、もっと言うと手だけでは無く上半身そのものがありません。下半身――脚だけなのです。その古そうなズボンだけを見て、私はお爺さんなのだろうと思ったのです。

私はその光景を見て、まず、恐怖よりも嘘だろうという感情が沸き起こりました。目の前の光景が信じられず、目をこすってもう一度前を見ると、もう、二人とも消えていました。後で子供に人がいたかどうか訊くと、
「そんな人、いないよ」
と言われてしまいました。あれは白昼夢だったんでしょうか?今でも忘れられない光景です。

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