足音
ペンネーム:なつさん
私は、子供を乳母車に乗せて、家に帰ろうと、細い路地に入りました。その路地は、とても細く、狭いので、人は一人か二人しか通れません。
しばらく、その路地を進んでいると、後ろの方から、
カツ…カツ…カツ…
と足音が聞こえて来ました。
(ああ、誰かがこの路地に入って来たな)
と思いました。最初の内は、まだ、私と距離があったので、あまり気にならなかったのですが、次第にその足音が近づいて来たので、私は少し道の端に寄りました。
カツ…カツ…カツ…
足音が、私の背後にやって来ます。
私は、その足音を聞いていて次第に、後ろから来ている人は、女性だろうと思いました。そう思った理由は、近づいて来る足音が、ハイヒールの音に聞こえたためです。しかし、いつまでたっても、その女性は私の背後を追って来るばかりで、追い抜こうとしません。しかし、私の背後では、
カツ…カツ…カツ…
と足音が響いています。
(ああ、そうか乳母車が邪魔なんだ)
と思ったので、私はその場で立ち止まり、乳母車をさらに道の端へ寄せました。――と不思議なことに、私の背後を歩いていた人の足音も止まりました。
(あれ?どうして、追い抜かないんだろう?)
不思議に思い、振り返ると、私はとても驚きました。
何と誰もいなかったのです。あんなに近くで足音がしていたのに、最初から、誰もいなかったかのように、足音の主は消えてしまいました。一体、あれは何だったのか、今でも見当がつきません。
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