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日本人形の桜の木
ペンネーム:桜さん
家の近くにある庭園で、夜桜のライトアップがあるという話を聞いたので、その庭園へ家族で出かけていったときの話です。日ごろは夜になると閉園になってしまう公園に、夜行くのはとても新鮮な体験でした。
ライトアップされている場所までは少し歩かなければいけなくて、皆で歩いていたのですが、その時妙なものを見かけました。そこはメインでライトアップされている場所ではないので、申し訳程度に光が当っていて、足下が見えるぐらいの明るさしかありません。前方を見ても、ほんの少し先は薄暗く、ましてや鑑賞ルートから外れている道は真っ暗闇でなにも見えないのです。
私が見かけた妙なものは、その闇が広がっている鑑賞ルートから外れた道にいました。頭を結い上げて、時代劇で出てくるような着物を着た女性が数名歩いていたのです。着物は何枚も重ね着をしているようでとても物々しく、布地は地面まで届いており、砂利を引きずる音が聞こえてくるようでした。しかし、その女性たちは一瞬目にしましたが、すぐに闇に消えていってしまいました。その時は、気のせいだろうと思い、若干の気味悪さを覚えながら、メインでライトアップされている場所へと向っていきました。
メイン会場は圧巻で、桜がきれいに咲き誇っていました。私は記念にと携帯電話を取り出し、一際枝振りのよい桜に向ってシャッターを切りました。出来上がった写真を見ると、どうもおかしいのです。桜の木を遮るように赤いもやがかかってしまい、肝心の桜がほとんど見えません。よくよく眺めてみると、そのもやの中心には小さな人のような、日本人形のようなものが写っており、それがジーッとこちらを見つめています。おかっぱ頭の色の白い人形で、着ている着物はどうも先ほど目撃した着物を着た女性の身に着けていた物とよく似ていました。
見れば見るほど、姿かたちがはっきりしてくる日本人形の写真に戦慄を覚え、写真を削除しようとしました。ですが、不思議なことに写真は何度消去ボタンを押しても消えてくれず、むしろ消去しようとすればするほど、日本人形の表情が険しいものになっていく気がします。
五度目にやっとその写真が消えてくれて、私は胸をなで下ろしました。あんまり、気味が悪いことばかりが続いたので、早々に私たちは家に帰ることにしました。庭園を出るときも例の薄暗い通路を通ったのですが、決してうしろを振り返ることだけはしませんでした。なぜなら、視線の端っこに例の赤い着物が暗闇に浮かび上がっているのに気づいていたからです。
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