墓からのぞく者たち
ペンネーム:ペコちゃんさん
これは妹とお墓参りに出かけたときのお話です。私たちは、幼いときから祖父母や両親に連れられて、よくこのお寺へお墓参りに行きました。結構大きなお寺だったので、お墓があちらこちらに点在していて、非常に迷いやすい構造のお寺でした。
私たちは、お線香とお花を手に、幼い頃から通いなれた道を歩いていきました。しばらくまっすぐ進んでいくと、左手にとても大きな木が茂っていて、その傍らにお地蔵様がたくさん並んでいます。そして、そのお地蔵様のうしろには、大きくて立派なお墓があります。
私は、幼いときから、(ああ、立派なお墓だな)と見かける度によく思っていました。その日は、誰かがそのお墓にお参りに来ていたらしく複数の人影が見えました。どうも太陽の光加減によるものなのか、その複数の人たちは、まるで黒い影がうごめいているように見えて少し不気味でした。
私たちは、特に気にするでもなく、そこを通り過ぎようとしたときでした。急に強い視線を感じたのです。なんだろう? 私は、視線がする方へと顔を向けました。すると、先程までうごめいていた黒い影が、動きを止め、やはり太陽の光加減なのか顔はよくわからないのですが、どうやらこちらをジーっと見ているようなのです。
うわー、気持ち悪いなと思い、妹に
「ねえ、あそこのお墓参りしている人たちなんでこっちを見ているんだろうね?」
と問いかけました。しかし、妹はきょとんとした顔をこちらに向けて、
「え? 何言ってるの? そんな人たちいないじゃない」
「え?」
私は、驚いてそのお墓に視線を移しました。
いない。さっきまで、たしかにいたはずなのに、それは白昼夢のように跡形も無く消えてしまったのです。
「え!? でも見なかった? 黒い影があのお墓で動いてたよね?」
妹はしばらく考え込んで、ああというような目をして、
「そういえばいたね。目の錯覚かと思ってた。じゃあ、あの人たちは一体どこに消えたんだろう……」
とつぶやきました。
この後も毎年お墓参りに出かけますが、もう二度と同じ黒い影を見かけることはありませんでした。一体あの影はなんだったのでしょうか? ちなみに、今でもそのお墓は、同じ場所にたたずんでいます。
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