病院に住まう者たち
ペンネーム:じゅんさん
子供が救急で、私の家の近くにあった、病院に行ったときの話です。その病院に着いたときは、すでに夜も更け初めていました。
夜の病院はとても気味が悪く、古くからある病院であったため、より不気味さを際立たせていました。受付を通り診察室に向かいます。すでに消灯しているため、人は一人も居ません。廊下は薄暗く、所々に僅かな明かりがあるだけです。
しばらく真っ直ぐ進んでいると、待合室に出ました。
(ああ、良かった人が居る)
待合室には数名の人が座っていて、心細かった私は少し気が楽になりました。しかし、近付いて行く度に安堵から違和感に、そして恐怖を感じました。
(……何であんなに人が居るの?)
待合室には、席という席にびっしり人が腰掛けています。
しかも、座っている人達は皆見るからに重症患者で、顔が包帯でぐるぐる巻にされている人や、松葉杖を横に掛けて、骨折したのでしょう、包帯で巻かれた足を投げ出している人、さらには火傷をしたように皮膚がただれている人等、とにかく沢山の人が座っています。
しかし、そこを通らなければ診察室には行けないので、仕方なくその人達の間を通ることにしました。その人達の側を通っても、皆一様に身じろぎ一つせず、うつ向いていたので、少し安心していたときです。突然その人達が一斉に私を見ました。まるで、私がここを通るのを待っていたかのようです。私は心臓が止まりそうでした。しかし、ここで顔色を変えては、その人達のことが見えているということを、悟られると思ったので、なるべく平静を装い足早にそこを後にしました。
しばらく行くと、今度は手術室の前に出ました。ここまで来ればもう大丈夫だろうと、考えていたのですが、まだ背筋がゾクゾクします。その時です、私はその場で立ち尽くしてしまいました。一気に冷たい物が背中を伝い、目はそれからそらすことが出来ません。
それもその筈で、突然、手術室から手術着を着た、真っ青な顔をしたお爺さんが、私の顔の前をスーと横切って壁の中を通り過ぎて行きました。
(ち、近い……近すぎる……)
私はしばらくその場を動けませんでした……
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