これは、私の父が20年程前に体験した実際のお話です。

その昔、父は火葬場で努めていました。努めて半年目の夜、
父は帰るため、火葬場をあとにしました。
その火葬場はすこし離れた距離にあり、途中に車一車線程の小さなトンネルがあります。
いつものように徒歩でそのトンネルを潜ろうとした時です。
真っ暗なトンネルの向こうから、「コツ、コツ」と足音が聞こえます。
しかも、その足音は1人ではなく複数人で、こっちに向かっているように聞こえます。
そこの火葬場は行き止まりにあり、人なんて通るわけがありません。
父は怖くて動けずトンネル入り口の明るい壁のところにくっつく形で固まってしまったそうです。
すると、その人たちがこっちに来て、目の前を通ったのです。
そこで父が見たのは、兵隊の格好をした人が2人がかりで担架に乗った全身血塗れの兵隊を運んでいる姿でした。
それを見た父は、恐怖で目をつぶり壁に背をくっつけたままトンネルを抜けたそうです。
その兵隊たちは父と目も合わせなかったと言っていました。

次の日に父は、その出来事を同じ職場の方に話すと・・・昔この火葬場ができる前、戦時中に戦死した兵隊を集めて一斉に火葬していたらしく、それで未だに成仏できなかった兵隊達が運んでるんじゃないかな。トンネルも兵隊が雨宿りや隠れるために作られたと聞いたことがある。・・・と言われたそうです。
以前それで辞めた人がたくさんいたみたいで、今では父もその内の1人です。本当に怖かったといっていました。
そこの火葬場で努めて15年あまりのその人は、今まで一度もその兵隊達を見たことがないそうです。

←前の怖い話へ

次の怖い話へ→

目次へ戻る
TOPへ